「バタフライのタイムが、ある時点から全く伸びない…」
「練習量を増やしても、後半にバテてしまう…」
多くのスイマーが、このような壁に直面します。
実は、今回ご紹介するNS様も、長年のデスクワークによる姿勢の悪化が原因で、同じ悩みを抱えていました。
本来使うべき背中の筋肉がうまく使えず、腕の力だけで泳いでしまい、すぐに体力が尽きてしまう…という悪循環です。
この「水中で解決できない問題」を克服するために、原因となっている体の使い方と、根本的な筋力を改善する、陸上でのパーソナルトレーニングを開始しました。
この記事では、その具体的なアプローチと、NS様が遂げた泳ぎの変化の全てをご紹介します。
なぜバタフライのタイム向上に「陸上での筋トレ」が不可欠なのか?
多くのスイマーが、タイムを縮めるために、ただひたすら泳ぎ込みの量を増やそうとします。
しかし、あるレベルから先は、水中で解決できない「絶対的な筋力不足」や「体の使い方の問題」が壁となって立ちはだかります。
ここでは、「なぜバタフライに陸上での筋トレが有効なのか」、タイム向上に直結する重要な筋肉と共に解説します。
推進力を生み出す「広背筋」

バタフライの力強いプル動作は、主に背中にある「広背筋」が、肩や腕の筋肉などと連動することで生み出されています。
水中で腕が前方から身体の横を通り、後方へ水を押し出す「キャッチ→プル→プッシュ」という一連の動作全てで、これらの筋肉が連動します。
この連動の中心となるのが広背筋です。この広背筋をうまく使えなければ、そもそも力強い推進力を生み出すことはできません。
水中で身体を安定させる「体幹」


力強いストロークをしても、体幹がブレていては、生み出したパワーが水に伝わらず逃げてしまいます。
バタフライ特有の「うねり」の動きは、腹筋や背筋といった体幹の強さがあって初めて安定します。
体幹が弱いと、腰が沈んでしまい、水の抵抗が増えるだけでなく、非効率な泳ぎの原因となります。
力強いキックを生む「お尻の筋肉」

ドルフィンキックをモモの筋肉だけで打っていませんか?
実は、力強いキックは体幹から始まったうねりを、お尻の筋肉(大臀筋)で爆発させ、そのパワーを足先まで伝えることで生まれます。
このお尻の筋肉をうまく使えないと、キックはただの水の泡となり、体を前に進める推進力を生み出すことはできません。
しなやかな動きを生む「肩甲骨」の柔軟性

意外に見落とされがちですが、スムーズなストロークのためには、肩甲骨周りの柔軟性と安定性が不可欠です。
肩甲骨がしなやかに動くことで、腕を水中から引き上げ、前方に戻すリカバリー動作が楽になり、肩への負担も軽減されます。
逆にこの部分が固まっていると、NS様がそうであったように、腕の力に頼って泳いでしまうため、後半に体力が持たなかったり、タイムが伸び悩んだりする原因となります。
タイムを更新した具体的な筋トレメニュー
ここでは、NS様のタイムを飛躍的に向上させた、具体的な陸上トレーニングのメニューと考え方をご紹介します。
トレーニングは、バタフライの動きのを3つの要素に分解しそれぞれの動きを強化することを目的としました。
- 水を掻く動き(プル動作)
- 腕を回す動き(リカバリー動作)
- 体をうねらせて蹴る動き(キック動作)
パワーの土台を作る「BIG3」

NS様はトレーニング初心者だったため、全身の基礎筋力を徹底的に向上させました。
「BIG3」の中から、「ベンチプレス」と「デッドリフト」の2種目に重点おいてトレーニングしました。
種目名 | 効果 |
---|---|
ベンチプレス | ストロークで水を押し切るパワー向上 上半身全体の基礎筋力を向上 |
デッドリフト | ドルフィンキックの源となる股関節周りの筋力向上 下半身全体の基礎筋力を向上 |
スイマーにとって非常に重要なこの2種目において、40kgから100kgまで扱えるほどに筋力が向上しました。
これが、力強い泳ぎを生み出すための全ての土台となります。
推進力を生み出す「引く力」の強化メニュー

バタフライの強力な「プル動作(水を掻く動き)」の源となるのが、広背筋を中心とした「引く力」です。
この力を強化するため、懸垂(チンニング)を重点的に行いました。
種目名 | 効果 |
---|---|
懸垂(チンニング) | キャッチからプルまでの動きを強化 広背筋(引く力)の筋力向上 |
その他の補助トレーニング
上記の中心的なトレーニングに加え、総合的なパフォーマンスアップのため、コンディションに合わせて以下の補助トレーニングも行いました。
トレーニング法 | トレーニング例 |
---|---|
補助筋トレーニング | 主要種目をさらに強化する、部分的なトレーニング(肩、腕、腹筋など) |
体幹トレーニング | 泳ぎの軸をブレさせないための種目(キャット&カウなど) |
プライオメトリクス | 瞬発的なパワーを高めるトレーニング(メディシンボールスラム、ボックスジャンプなど)。 |
結果:NS様のタイムと泳ぎの変化
陸上での地道な筋力トレーニングは、水中のパフォーマンスにどのように現れたのでしょうか。ここでは、NS様が達成した、驚くべき結果をご紹介します。
夢の3分切り目前!タイムを「58秒」更新

トレーニング開始前、NS様のバタフライのタイムは3分59秒。ご本人は「3分20秒を切れたら…」という目標をお持ちでした。
そして、地道な陸上トレーニングを1年以上続けた結果、先日開催された記録会にて、ついに3分01秒という驚異的な自己ベストを達成!
当初の目標を遥かに上回る、実に58秒もの大幅なタイム短縮に成功したのです。
ご本人も実感した「泳ぎの質」の変化(お客様の声)
タイムだけでなく、NS様ご自身も「泳ぎの質」の変化を実感されています。
ご本人がトレーニングで最も大きな変化を感じたのは「今まで意識していなかった部位を使えるようになった」ことだそうです。
「正しいフォーム」を徹底する指導のもと、特に「肩甲骨」や「股関節」の動かし方を習得。
その結果、以前のように腕の力に頼るのではなく、体全体を使ったパワフルで、かつ「疲れにくい泳ぎ」が身についたとご報告いただいています。
※NS様のより詳細な「お客様の声」は、以下のページでご紹介しています。

まとめ:水中の壁は、陸で越えろ
この記事では、バタフライのタイムが伸び悩んでいたNS様が、陸上での筋力トレーニングを取り入れることで、見事「58秒(約1分)」ものタイム短縮を達成した事例をご紹介しました。
重要なのは、ただやみくもに泳ぐのではなく、自分の泳ぎの課題(弱点)を分析し、それを補うための正しい筋力トレーニングを、陸上で行うという視点です。
「水中で足りないものは、陸上で補う」。これが、パフォーマンスをもう一段階引き上げるための鍵となります。
もしあなたが今、NS様と同じようにタイムの壁に悩んでいるなら、一度、あなたの泳ぎを陸上トレーニングの視点から見直してみてはいかがでしょうか。
自己流のトレーニングで遠回りするのは、もう終わりにしましょう。
プロの視点であなたの課題を的確に特定し、N・S様がそうだったように、あなたのパフォーマンスを次のレベルへと引き上げるお手伝いをします。